高コストが定着する ⌄
二極化する市場 ⌄
イノベーターたちから学ぶ ⌄
協働モデル ⌄

背景

建設業界は 「挑戦から学びへ、学びから成長へ」新たな段階に入った。

著者:ニール・ブレン、不動産部門 グローバル・マネージング・ディレクター

2020年以降、建設業界は大きな環境変化に直面し、「ニューノーマル」への適応を模索してきました。市場は安定的であるという従来の認識や、コスト管理、リスク管理、国際的なサプライチェーンに関する長年の前提は、大きく揺らぐこととなりました。

建設業界は現在、「挑戦から学びへ、学びから成長へ」の時代へと移行しつつあります。そのなかで、変化への対応力と環境変化に耐えるレジリエンス(強靭性)が、業界の最大の強みとなりつつあります。

当初は、こうした「ニューノーマル」がこれほど不確実性の高いものになるとは、誰も予想していなかったでしょう。それでも、経済環境や地政学的情勢の不安定さが続くなかで、建設業界はかつてないほど変化への対応力を高めており、困難な状況にも柔軟に対応できる基盤を築いています。

グローバル市場全体を見渡しても、業界の機動力とレジリエンスは着実に向上しており、大規模な資本投資プログラムや複数のプロジェクトを抱えるポートフォリオを継続的に前進させています。

REALITY

高コスト構造が定着

変化への適応力やレジリエンスの向上には、それ相応の代償も伴っています。新型コロナウイルス感染症の拡大を機に上昇し始めた建設コストは、もはや一時的な現象ではなく、構造的に高い水準が定着しつつあることが明らかになっています。 本年のレポートでは、世界平均の建設コスト上昇率は安定化し、伸びも緩やかになっていることが示されています。しかしながら、建設コストが以前の低水準へ戻る可能性は低いと考えられます。プロジェクトを取り巻くさまざまなリスクは、これまで以上に契約価格へ織り込まれるようになっており、さらに深刻化する人材不足が労務費の上昇圧力を一段と強めています。 こうした環境下において、発注者や事業主には、プロジェクトの収益性や投資効果を確保するため、従来の手法にとらわれない新たなアプローチの採用が求められています。

MOMENTUM

二極化する市場

データセンター、先端製造業、物流施設といった高成長分野は、市場構造やサプライチェーンのあり方を大きく変えつつあります。これらの分野では建設コストの上昇への対応も重要な課題である一方、市場投入までのスピードが最優先事項となっており、より迅速なプロジェクト遂行が求められています。 そのため、限られた供給能力やリソース不足を補い、工期を短縮することを目的として、従来とは異なるプロジェクト推進手法や施工・調達モデルを積極的に採用する動きが広がっています。 一方で、住宅、公共施設、オフィスをはじめとする商業施設などの主要セクターでは、コスト上昇と供給能力不足という二重の課題の影響をより強く受けており、市場成長も比較的緩やかな状況にあります。 こうした分野においても、新たな市場環境に対応するため、従来のプロジェクト推進手法や事業実施モデルを見直し、再構築していくことが求められています。

イノベーション

イノベーターから学ぶ

本レポートで対象としたすべての地域において、データセンター分野の存在感はますます高まっています。同分野では、特に人工知能(AI)や自動化技術の積極的な導入、さらには戦略的なパートナーシップの構築を通じて、従来の枠組みを超えた新たなプロジェクト推進手法を模索し、スピードを重視した事業展開を実現しています。 データセンター分野は、こうしたイノベーションの取り組みにおいて一歩先を進んでいるかもしれません。しかし、高付加価値産業全体を見れば、同様の変革が急速に進んでいます。 製薬、ライフサイエンス、先端製造業といった分野では、資本投資が拡大しており、それに伴い進行中の大規模プロジェクトや投資プログラムは、これまで以上に大規模化・高度化・複雑化しています。

パートナーシップ

新世代の協働モデル

AI、自動化、モジュール化建設といった分野で先行して取り組む企業やプロジェクトが直面する課題を克服することで、その成果は業界全体に波及し、大きな恩恵をもたらすことが期待されています。そこには、テクノロジー業界が培ってきた機動力や、「まず試し、学び、改善する」という迅速な試行錯誤の姿勢から学ぶべき点が数多くあります。 こうした新たな働き方やプロジェクト推進手法を実現するうえで、発注者とサプライヤーのパートナーシップはこれまで以上に重要な役割を担います。高いリスクを伴う挑戦によって大きな成果を目指すからといって、そのリスクを一方的にサプライチェーンへ転嫁するべきではありません。 もちろん、すべてが計画どおりに進むとは限りません。しかし、信頼に基づく強固なパートナーシップがあれば、課題に直面した際にも代替案や解決策を見出し、次の一歩へとつなげることができます。 建設業界全体として見れば、単独で成果を追求するのではなく、関係者が協力して取り組むことで、より大きな価値を創出できるはずです。そのためには、新たな時代にふさわしい協働モデルを構築していくことが不可欠です。 これを実現できれば、その変化は単に「どのように建設するか」にとどまりません。プロジェクトが生み出す成果や事業価値、そしてパフォーマンスそのものを根本から変革するほどのインパクトをもたらすでしょう。

著者

ニール・ブレン   不動産部門 グローバル・ マネージング・ディレクター


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