世界の建設業界の見通し ⌄
好調なセクター ⌄
地政学的リスク ⌄
クライアントへの影響分野 ⌄

グローバル概要

世界の建設 市場動向

著者:ステフ・マーシャル、コスト管理部門 マネージング・ディレクター

世界各地で、建設市場の二極化が鮮明になりつつあります。データセンターや先端製造業をはじめとするテクノロジー主導の成長分野では、これまでにないほど高い需要が生まれています。 一方で、世界的な不確実性や市場の変動性に加え、人材不足や供給能力の制約といった構造的な課題が重なり、住宅開発や商業不動産開発などの分野では、投資家の信頼感や投資意欲が抑制されています。

グローバル概要

世界の建設業界の展望

新たな需要構造

長年にわたり建設需要を支えてきた商業施設および住宅分野では、借入コストの上昇や投資環境の慎重化を背景に、需要が弱含みとなっています。その結果、多くの市場で新規プロジェクトの着工ペースが鈍化し、将来の案件パイプラインの拡大もより緩やかなものとなっています。

一方で、建設需要の中心は、インフラやテクノロジー主導の成長分野へと移りつつあります。データセンター、先端製造施設、AI関連インフラへの投資は引き続き力強く拡大しており、建設市場の成長をけん引する存在となっています。

こうした市場の二極化と、特定分野への投資・需要の集中は、建設コストの上昇構造にも変化をもたらしています。これまでのように幅広い分野で一律にコストが上昇する局面から、現在は次のような特徴を持つ新たな局面へ移行しつつあります。:

  • セクター別の需要動向
  • 慢性的な労働力不足
  • エネルギー関連リスクの影響拡大

→

追い風 – 成長分野、政府による支援策・インセンティブ、大規模かつ長期的なプロジェクト・投資プログラム、新技術やAIの普及・活用

←

逆風要因 – 貿易摩擦・関税措置、金利上昇とインフレ、人材・労働力不足、地政学的対立や国際紛争、エネルギーコストの上昇。

分断化された市場環境

これらの市場変化の背景には、グローバル経済を取り巻く複雑かつ不確実な事業環境があります。各国で進む関税政策や輸出入規制の見直し、サプライチェーンの再編、さらには地政学的リスクの高まりが相まって、世界経済はこれまで以上に分断化された様相を強めています。 一方で、こうした環境変化は市場に一定の変動をもたらしているものの、その影響は当初想定されていたほど広範囲には及んでいません。企業や投資家は新たな環境への適応を進めており、多くの市場では事業活動や投資判断が継続されています。

好調なセクター

セクター別の建設市場動向を見ると、需要の中心がテクノロジー関連分野、物流分野、そして公共投資へと移行する傾向が引き続き鮮明になっています。 こうした状況は、分野ごとに成長速度や需給環境が異なる「マルチスピード化した建設市場」の姿を映し出しています。この市場構造の変化は、建設コストの動向や施工会社の供給能力に大きな影響を与えており、世界の建設市場全体の需給バランスを左右する要因となっています。

データセンター

当社の調査において、データセンターは引き続き世界で最も活発な建設分野となっています。特に東南アジアや中南米で市場拡大が進んでおり、その成長はデジタルインフラ、クラウドサービス、AI関連能力への投資拡大によって支えられています。

産業・物流

産業施設および物流施設は引き続き堅調に推移しています。生産拠点の国内回帰・近隣国移転(ニアショアリング)、サプライチェーン再編、EC市場の成長を背景に、建設需要を力強くけん引しています。これにより、デジタルインフラと物流インフラの重要性が一段と高まっています。

インフラ・運輸

継続的な公共投資を背景に、インフラおよび交通分野では安定したプロジェクトパイプラインが維持されています。また、世界的なエネルギー転換の進展に伴い、再生可能エネルギーやクリーンエネルギー関連プロジェクトの重要性も高まっています。

商業・住宅

商業施設および住宅分野は、需要の減速傾向に直面しているものの、依然として建設市場全体において大きな割合を占めています。

プロジェクト

ODATA社と共同でコロンビア最大級のデータセンターを構築

詳細はこちら

プロジェクト

シーメンス社との協業による バルバネラ製造拠点の近代化

詳細はこちら

プロジェクト

Transport for NSWと連携し、世界最高水準のシドニー・メトロを実現

詳細はこちら

プロジェクト

スポーツ・ブールバード財団と共に、サウジアラビア、リヤドの都市生活を変革する

詳細はこちら

図1:

2025年と2026年の建設市場における主要セクター比較(活動水準ベース)

出典:ターナー・アンド・タウンゼント「2026年世界建設市場インテリジェンス調査」

見通し

高まる地政学的リスク

建設コストの今後の見通しは、プラス要因とマイナス要因が拮抗しており、予断を許さない状況にあります。総じてインフレ率は2026年にかけて落ち着きを見せており、金融環境の緩和やテクノロジー・インフラ分野への継続的な投資が、その安定化を支えています。 しかしその一方で、地政学的な情勢変化が先行きに新たな不確実性をもたらしています。

中東紛争

イラン湾岸(ペルシャ湾)を巡る紛争は、世界的なエネルギー市場の変動性を高めています。原油の国際指標価格は2026年1月時点で1バレル当たり約60米ドルでしたが、6月には90米ドル近くまで上昇しました。エネルギー価格は世界各地で上昇しており、幅広い経済活動や成長見通しに影響を及ぼしています。 建設市場への影響は主として間接的なものですが、そのインパクトは決して小さくありません。具体的には、以下のような影響が想定されます。: ・建設資材の製造コスト上昇 ・輸送・物流コストの上昇 ・建設機械・設備の運用コスト上昇 さらに、主要な海上輸送ルートの混乱は、資材調達のリードタイム長期化やサプライチェーンの不安定化を招く要因となっています。 こうした影響の大きさは市場ごとに異なり、特に以下の要因によって左右されます。: ・輸入資材への依存度 ・グローバルサプライチェーンとの結び付きの強さ ・エネルギー価格変動に対する感応度

シナリオに基づく影響

本レポートで採用したベースラインシナリオは、IMFの4月版『世界経済見通し(World Economic Outlook Update)』に基づいています。ただし、このシナリオでは紛争が短期間で収束し、2026年のエネルギー関連コモディティ価格の上昇も緩やかな水準にとどまることを前提としています。先行きは依然として不透明であり、紛争の長期化やさらなる深刻化が生じた場合には、インフレ、サプライチェーン、建設コストに対してより大きな影響が及ぶ可能性があります。

「建設コストの動向を左右する要因は、世界的に新たな局面を迎えています。需要は依然として業種や分野によってばらつきがあり、特定セクターへの集中傾向が強まる一方で、労働力不足、サプライチェーンの不安定化、そして地政学的リスクといった課題が、これまで以上に顕在化しています。」

クライアントへの影響分野

確実なプロジェクト推進

不確実性の高まりにより、市場全体として新たな混乱や想定外の事象に対する許容度は低下しています。そのため発注者は、プロジェクトの進捗順序や予算の妥当性について適時かつ適切な意思決定を行えるよう、施工会社やサプライヤーに対して、より明確で頻度の高い情報提供を求める必要があります。

市場の動向

短期的には、市場において価格の見直しが急速に進むとともに、リスクプレミアムの上昇や慎重な意思決定の傾向が強まると見込まれます。 こうした環境下では、発注者と施工会社の間で早い段階から率直かつ透明性の高い対話を行うことが極めて重要です。リスクを早期に特定・共有し、現実的かつ実行可能な解決策を共同で検討することで、不確実性への対応力を高めることができます。

建設コストインフレ

燃料やエネルギー価格の影響を受けやすいコンクリートや鉄鋼などの資材では、引き続き価格上昇圧力が高まっています。そのため、プロジェクトチームは早い段階からコストリスクについて議論し、想定条件の妥当性を検証するとともに、適切なモニタリング方法について合意しておくことが重要です。

物流および輸送の混乱

ホルムズ海峡を経由する輸送ルートの利用制限や、それに伴う迂回輸送の長期化により、資材や設備の調達リードタイムが延びるとともに、輸送コストも上昇しています。 こうした状況に対応するためには、サプライヤーとの定期的な情報共有を行い、物流リスクを継続的に可視化することが重要です。これにより、将来的なコストや納期への影響をより正確に予測できるようになります。

著者

ステフ・マーシャル コスト管理部門 マネージング・ディレクター


目次


フォローする

ホーム

背景

市場動向

投入コスト

生産コスト

主なテーマ

地域別インサイト

調査方法

お問い合わせ


© 2026 ターナー・アンド・タウンゼント


プライバシーポリシー


クッキーポリシー